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米国発のガス革命が世界の資源地図を塗り替えようとしている。
 全米で「シェールガス  *1」という新型の天然ガスが大増産され、その余波が世界中に及んでいるのだ。日本の総合商社もこの地殻変動に商機を見出し、参戦を始めた。
 シェールガスとは、泥土が堆積して固まった岩の層に閉じ込められているガス。米国では膨大な量が埋蔵されていたが採掘が難しく、放置されていた。ところが「硬い地層からガスを取り出す技術が確立されたことで、数年前から開発が一気に進んだ」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の市原路子主任研究員)。
「シェールガス革命」と称されるこの大増産は、米国のガス戦略を根底から覆した。米国エネルギー省の2004年版長期エネルギー見通しで、25年の輸入依存度は28%と試算されていたが、最新の09年版では30年の依存度でもわずか3%と、前代未聞の大幅見直しがなされたのだ。実際、米国で確認された天然ガスの埋蔵量はわずか3年で2割以上も増えた。
 米国の天然ガス相場は08年7月の100万BTU当たり13.69ドルをピークに、09年9月には2.4ドルまで急落した。この結果、米国向けLNG(液化天然ガス)の大半が必要なくなり、激安のスポットLNGとして欧州市場に流入。世界的不況によるガス需要の減少も追い打ちをかけ、世界のガス市場は大混乱に陥った。
 長期契約で欧州にガスを輸出していたロシアの独占天然ガス企業ガスプロムは昨年、西欧向け輸出が3割減少する羽目になった。昨年に巨大なLNG基地を完成させ、今年中には世界最大のLNG輸出国となるカタールでは、当て込んでいた米国需要が吹き飛んだ。
 ロシアからのパイプラインに依存してきた英独仏をはじめ欧州各国は、ガスプロムの呪縛から逃れようとわれ先にとシェールガス探査に着手している。
 昨年末には住友商事が米国でシェールガス開発に日本企業として初めて参画することを明らかにした。他の総合商社も参入の機会をうかがっており、三菱商事は韓国ガス公社と組んで、シェールガスの開発を狙う。
 市原主任研究員は「LNGの価格メカニズムが変革期にきている」と指摘する。今後もLNGは買い手市場が続くと見られ、最大のLNG輸入国の日本も、恩恵に浴する可能性が高まってきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

注1:
シェールガスとは,泥岩に含まれる天然ガスのこと。
非在来型天然ガスの一種。在来型との違いは、貯留層が砂岩でなく、泥岩(頁岩)である点にある。泥岩の中で、特に、固く、薄片状に剥がれやすい性質をもつシェール(頁岩)に含まれることから、シェールガスと呼ばれる。
商業的生産は、米国でのみ行われており、1970年代末、東部のアパラチア山脈などに主として分布する古生代デボン紀の頁岩、デボニアンシェールから始まった。
通常の泥岩は、石油、天然ガスの根源物質であるケロジェンを含む根源岩となるが、隙間(孔隙率)も浸透率も低いため、貯留岩とはならない。しかし、デボニアンシェールは、非常に厚い泥岩層であり、長い地質時代を通じて地下深くで圧密作用を受け、微細な割れ目、フラクチャーを生じた。その結果、ある程度貯留岩としての性状を持つようになった。ただし、その孔隙率は4%以下、浸透率も0.001~0.002md(ミリダルシー)と低く、シェールガスの生産性は低い。
しかし、米国においては、タイトサンドガス他の非在来型ガスと同様、シェールガスも1980年代から税制優遇(1ドル/mcf)を受けることなり、生産量が増大した。優遇策が撤廃された1992年以降も生産は継続し、1985年の0.13から、1995年の0.28、2005年の0.83tcf(兆立方フィート)へと増大している。主生産地域も、米国東部地域から、中部イリノイ、南部テキサス、西部ニューメキシコ地域へと拡大移行している。
シェールガスは、米国における非在来型天然ガスの生産において、タイトサンドガス、コール・ベッド・メタンに次ぎ、第3位である。
シェールガスの原始埋蔵量はきわめて大きく、米国で数百から1,000、世界では数千(tcf)
との推定がある。(森島 宏、2009年4月)
From :JOGMEC

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